いと甘し。



〇〇〇



 さっきあんず橋を渡ってきた男は、当然のようになごみ屋の中へ入ってきた。


「…何で来たの、斎藤」


 私はテーブルの上に乱暴に湯呑みを置いた。斎藤は頬杖をつきながら、私を見上げている。



「それ、客に対する態度じゃなくね?」

「黙れ」



 こちらが怒っていることなんてどこ吹く風のようで、斎藤は呑気にお品書きを眺めている。



「そういやさ、今日入学式だったんだよ。知ってた?」

「え…?」

「知らなかったのかよ。まぁ、安心しとけ。お前一応進級できたから」



 進級、出来たのか。私はとりあえずホッと胸を撫で下ろした。だが次の瞬間、地獄に突き落とされることになった。



「でも2週間後にある実力テスト受けなきゃ留年だってさ」

「…は?」




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