小春日和
 


毎日、授業が終われば真っ直ぐに帰宅する香織。俺がいない時ぐらい、家に一人でいるより、ダチと遊びにでも行ってこいと言ってるんだが、今日も寄り道せずに真っ直ぐ帰宅している。



そんな香織に、先ほどからイライラの一番の原因でもある事を告げるのは、何とも気が重いが仕方ねえ。



「悪いな香織。今夜もちょっと帰れそうにないんだ」



『そう、ですか。分かりました。

私の事なんて気にしないで下さい。それよりも、あんまり無理しないでお仕事頑張って下さいね』



「……なんだよ、少しは寂しがれよ」



ゴネられたって帰ってやる事など出来ないくせに、あっさりと聞き分けの良い香織に、ついガキみてえな拗ねた言葉が口をつく。



『寂しくない訳じゃないですけど、猛さんが無理をする方がずっと心配です。それぐらいなら、こうして電話で話すことも出来るんです。数日あえないぐらい平気です』



いつもお前は自分の事より俺の心配なんだな。



これ以上話しをしていると、更に拗ねた事を言っちまいそうで、俺は明日の深夜か明け方の帰りになるから先に寝るように告げて電話を切った。



 
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