小春日和
長い出張を終え、漸く帰宅できたのは、やはり深夜を少し回った頃になった。
本宅の車寄せに滑り込んだレクサスに、夜勤の組員達が一斉に出迎える。
足早に奥へと向かう俺に、佐竹が香織の様子を報告しにきた。
「姐さんは今日は随時と早めにお休みのようです」
「あぁ?」
早めに休んだ?どういう事だ。具合が悪いなんて報告は受けてねえぞ。若干歩みを緩めて佐竹に怪訝な視線を向ける。
「具合が悪いとかそういう事ではなく、ただお疲れになったようですね。夕飯も普通に召し上がってました」
とりあえず香織の具合が悪い訳じゃないと言われ安堵した俺は、小さく頷くと佐竹に労いの言葉をかけ、香織のもとへ急いだ。
起こさねえよう慎重にドアを開ける。香織はその生い立ちのせいか眠りが凄く浅い。だからちょっとした物音でも直ぐに目を覚ましてしまう。
「………」
気配を殺し、そっとベットに近づいた俺は、目にした光景はあまりにも衝撃的で、思わず絶句した。
俺の枕に頬をうずめるようにして眠る香織。キツく握られた手は、俺の枕をしっかりと掴んでいる。