小春日和
一斉に部屋を飛び出して行く者達の後ろ姿を、放心気味で見送っていると、佐武さんに別室に呼ばれた。
「森田、紫藤、松野はこれからの事を打ち合わせる。付いてこい。」
どうやら俺の耳は正常だったみたいだ。別室に移ると、直ぐに明日の朝の迎えだとか、姐さんの朝食の手配など、細かい指示が与えられる。
そして一通り打ち合わせが終わると俺は、先ほどからずっと疑問に思っていた事を聞かずにはいられなかった。
「あの、佐武さん。一つ質問をしても宜しいでしょうか?」
「なんだ」
「どうして姐さんの付き人に、俺は選ばれたんでしょう?」
俺の疑問は至極真っ当なもので、実力派として名を馳せる中堅の森田さんや紫藤さんといった錚々たるたる顔ぶれに混じって、まだ駆け出しの俺の名前があがるのは、どう考えたっておかしい。
そんな俺の疑問に、佐武さんはニヤリと笑うと、答えてくれた。
姐さんの運転手として、姐さんと年の近い者達を数名ローテーションで付け、様子を見ていた事を。