小春日和
佐武さんの言葉に、ガラにもなく目頭が熱くなって、慌てて下を向く。
「……信頼…」
ポツリとこぼれ落ちた言葉は、妙に胸に響いた。
俺の両親は二人そろって教師だった。だから俺は勉強が出来て当たり前。
どんなに頑張ってテストでいい点をとっても、満点でなけば怒られたし、満点をとっても、それは問題が簡単だったからで、もっと勉強をしろと誉めてくれる事などなかった。
ある時、俺の事をやっかんだ奴が、俺がカンニングをしたと嘘をついた。
学校に呼ばれた親父は職員室に現れるなり、俺の話など一言も聞かずにいきなり俺を殴った。
まだ小学生だった俺は、椅子をなぎ倒しつつ二メートル程吹っ飛ばされ、前歯を折られて顔中血だらけになった。
慌てて止めに入った担任を無視して更に殴ろうとする親父を、お袋は止める所かカンニングなんて卑怯な事をするような子供は厳しく躾るのが当然だと冷笑を浮かべた。
その後、俺の無実は証明されたが、両親からの謝罪の言葉は一切なかった。
今まで親に好かれようと必死になっていた自分が馬鹿らしくなった俺は、お決まりのようにグレて、族に入って親から勘当された。