Iloveyouの1言を。
~巧~                     初めて桜と出会ったのは、台風並みの風が吹いていた時のこと。
『巧なにしてんだよっ早く帰るぞっ』
隣にいる男友達の鷹(たか)が風で折れた傘を振り回しながら叫ぶ。
…しばらく叫んでいた鷹だったがようやく諦めたのか帰っていった。
…俺はというと学校にかなり近い通学路のトンネルの中にいた。
…子猫が段ボールの中に捨てられていたのだ。
俺はふるふる震えている子猫を見つめながら、どうしようか悩んでいた。
俺の家はマンションだし、このままここにほっとくこともできない。
『あれ…佐田君』とそこにきたのが桜だった。
『どうしたの七組の佐田巧君でしょ』
桜は俺の下にある段ボールを見つけると中を除き込む。
『あぁ、子猫…。なるほどね…それで動けないわけだ』
俺はこくっとうなずく。
『佐田君飼えない…みたいだね』
『何で…』
わかったんだろう…
マンションに住んでることは言ってないのに…。
『え…だって佐田君、子猫のことが心配でずっとここにいたんだよねそういう人はまず飼えたら自分の家に連れていくでしょうでも飼えないから心配でここにいたんだよね』
ー…何で分かるんだろう
幼稚園から17年の付き合いの鷹でさえも、俺は無口でよく分からないという。
…でも本当にどうしようか。
ずっとここにいるわけにもいかない。
『あ。私一軒家だから飼ってもいいか聞いてみるね』
『えっ…でも…』
『大丈夫。私ん家みんな動物好きなんだ』
『じゃあバイバイ』と言って桜は子猫を雨に濡れないように、ぎゅぅっと抱きしめて帰っていった。
多分このときから桜のことが好きなんだと思う。
うん。
なぁ、俺は桜が思うよりずっと桜のことが好きだよ。
分かりにくいかもだけど。 
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