Iloveyouの1言を。
~巧~                     桜のケータイがなんどかけても繋がらない。
「ばいばい」
そういった桜の声は今にも消えてしまいそうだった。
あの日…
図書室にいったら本当に偶然、飛鳥がいた。
『なにしてんの』
最初に声をかけたのは俺。
『ああ、担任から資料頼まれちゃって』
『ふーん』
そんな会話を交わしながら俺は桜がくるのを待つ。
…さっき、桜の様子が明らかにおかしかった…。
なんかあったのかな…。
『巧は何してるの』
『ん。桜待ってる』
いきなり…本当に突然だったんだ。
キスー…
『っんんっは…ぁ』
何でー…
『いきなりっ…キスとかだめだろっ飛鳥っ』
ガタンッ
えー…
嫌な予感がした。
『桜…』
『あっ…二人してどうしたの…何か…あった』
桜にそう聞かれて俺はとっさに嘘をついてしまった。
『担任に資料を頼まれたから…』
言ってしまったと後悔した。
桜の顔がふっと歪む。
『好きって言ってくれたことなかったもんね』
そして
『ばいばい』
ー…こんだけ桜のことでいっぱいなんだから、当然気持ちなんて伝わってると思ってた。
…違う。
無表情で感情表現の苦手な俺のことを桜はわかってくれたから、甘えてたんだ…。
“好き”ってちゃんと言わないと伝わんないのに…
桜は俺にたくさん“好き”って伝えてくれてたのに…
ちゃんと向き合わないとな…
でもそのためにはまず俺に“好き”って言ってくれた飛鳥と向き合わないといけない。
「飛鳥…あのさー…」                                                                                                                                              
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