空のこぼれた先に
……クレアは、民に愛される王女ではない。
王都から離れた街に住む私にさえ聞こえてくる、現君主に対する評判は、それはひどいものだった。
権力を振りかざした独裁。
おそらく権力を手にするのが早すぎたのだと、ほとんどの民はもう、諦めている。
政治にさほど詳しくない私にさえ分かるほど、気付けば貴族や王族ばかりに富が流れる仕組みになっていた。
重なる税は、民の生活を蝕んでいく。
いつ暴動が起きてもおかしくない状態で、だからこそ、王女と似ている私が呼ばれた。
王女を守るための、身代わり。
そんな存在が必要だと判断されるくらいに、この国は今、乱れているのだ。
……人々を苦しめる国を作った王女。
きっと人の心など持たない、人の命などなんとも思わない、そんな王女なのだと、思っていた。
城に入った私のことだって、きっと人だとも思ってくれない。
都合のいい自分の盾としか思わないだろう。
そう思って、ここに来た。
だけど。
……違う気がする。
思っていたような冷酷なだけの王女なら、きっとあんなふうに笑えない。