空のこぼれた先に
王女の身代わりにと城に連れて行かれた彼女。
『きっとまた逢える』
別れ際に残した言葉、それがどれだけ難しいことかは分かっているつもりだった。
それでも可能性はゼロではないと信じて、サユの帰りを待っていた。
……手放せなかったんだ。
サユにもらった、やさしくてあたたかい時間を。
もう二度と触れることのできないものだと、信じたくなかった。
きっと大丈夫。
自分さえ一途に待ち続けていれば、どれだけ時間はかかろうと彼女は帰ってくる。
俺のところに戻ってくる。
……そう信じて、思いこんで、毎日を過ごしていた。
だけどやがて、現実はひどく残酷で、無慈悲なものだと思い知る。
サユが城に呼ばれてから1年が経った去年の今頃、彼女の訃報をきいたんだ。