空のこぼれた先に
「今日の祭りで使うやつ?」
麻袋を受け取りながら聞く。
思った以上の重さが受け取った右手にかかり、慌てて両手で持ち直した。
「そうだよ。だからしっかり届けておくれよ」
「ん。わかった」
俺がそう答えると、ニナおばさんは笑みを深め、「じゃあ、よろしく頼むね」とくるりと踵を返した。
おばさんの後ろ姿を視界から遮るように、パタンとドアが閉まる。
おばさんの登場はいつだって突然で、こうして突然頼みごとをされるのも日常茶飯事だ。
俺は預かった麻袋を椅子の上に置いて、途中だった朝食の準備に戻ったのだった。
サユがいなくなってから、日常がとても味気なく思えた。
生きるために必要最低限のことだけをしている、そんな感じ。
だから、祭りにも足を運ぶ予定はなかったけど……、せっかくだから少し覗いてこようか。
そんなことをぼんやり考えながら朝食の準備を終え、作ったものを胃に流し込むと、立ちあがった。
ニナおばさんは朝食が食べ終わってからでいい、と決して急いでいるふうではなく言っていたけど、早いに越したことはないだろう。
俺は手早く身支度を済ませ、椅子の上の麻袋を持ちあげると、家を出た。