空のこぼれた先に
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「うわ、やっぱすげーな……」
ニナおばさんに頼まれた届け物を、無事商店街のパン屋まで持って行ったあと、祭りが行われる中心地である、この街で一番広い通りに出てみた。
目の前に広がった光景に、思わず独りごちてしまう。
あまりの人の数に。
本格的に祭りが始まるのは日が沈んでからで、まだまだ準備の段階だというのに、まるでこの街に住む全ての住民が集まっているかのよう。
いつもは落ち着きのある通りが色とりどりに飾られており、とても鮮やかで、賑やかだ。
思わずきょろきょろと視線を動かしながら歩いていると、ふと後ろから肩を叩かれた。
「カノン!」
肩を叩かれるのと同時に呼ばれた名前で振り返ると、そこにいたのはにっこりと笑顔を浮かべた少女。
いつもはおろしている緩くウェーブがかった金髪を、邪魔にならないようにか、今日は低い位置でふたつに結っている。