空のこぼれた先に
「アメリア」
足を止めて名前を呼ぶと、彼女は笑みを深めた。
「聞いたよ!朝からお母さん、小麦運ぶのカノンのところにわざわざ頼みに行ったんだってね」
そう言ってアメリアはおかしそうに笑う。
彼女のいうお母さん、とはニナおばさんのことだ。
アメリアは6人兄妹の次女。
笑顔を絶やさず、活発で面倒見がよくて。
そんなところはニナおばさんによく似ている。
「ごめんね~、朝から面倒事押し付けて!お母さんったら、カノンのことも自分の子どもみたいに思っているみたいで、全然遠慮がないんだから」
「いや、それは本当にありがたいと思ってるよ。いつも美味いご飯、御馳走になってるし」
家族の多いニナおばさんの家はとても明るくて、ひとりぐらしの長い俺にとっては、その幸せそうな明るさがまぶしく感じるくらいだ。
「ふふ、またいつでもご飯食べに来てね!……あ、そうだ!カノン、あれ」
軽やかに笑い声をこぼした後、アメリアはふいに通りの奥を指さした。