空のこぼれた先に

痛いくらいに強く、ドクドクと耳に反響する心臓の音が速度を増しているような気がした。

呼吸の仕方が、わからなくなる。
深く、浅く、不規則な呼吸音を不思議と客観的に聞いて、動揺した自分に落ち着けと言い聞かせる。

グッと胸で拳を握り、力を込めた。


……そうだよ、どうして気付かなかった?

この祭りに王族が出席することなんて、珍しくもなんともないことだったのに。

少し考えれば分かったことだろう。この異常な存在感を放つ天幕が、来賓のものだって。

今日来ているのが王女なのか、それとも代理の者なのかはわからない。

だけど、もしかしたら王女が来ているかもしれない、そう考えただけで胃液がせり上がってくるような感覚に襲われた。


……とにかく、早くここを離れよう。

そう思った俺は、足早に来た道を戻ることにする。

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