空のこぼれた先に
────サユを身代わりにして、平然と生きている王女。
サユを見殺しにした王女。
そんな憎むべき存在が近くにいるかもしれないのに、平常心でいられるわけがなかった。
かといって、自分に何かができるわけではないこともわかっている。
サユの敵をうつこともできない。
文句のひとつを言うことすら、許されないだろう。
そんな自分の無力が、嫌になる。
────意識は自分のなかの感情に完全に埋もれていた。
周りのことなどほとんど見えないままに歩いていた俺は、思ったより早足になっていたようで、いつのまにか、先程アメリアに声をかけられたあたりまで辿り着いていた。
さっきよりも人が多くなっていて、その人の多さにうんざりした俺は脇道に入ることにする。
……ていうか、戻ってきてどうするんだよ。
自分の家に帰るために曲がるべきだった道はとっくに通り過ぎてしまっていた。
「……」
はぁ、とひとつ息を吐く。
ここまで来てようやく、動揺していた気持ちが落ち着いてきた。