空のこぼれた先に

差し出したままの俺の手のひらには一向に触れようとはせず、立ちあがろうともしない。

ただ、怯えたように身体を硬直させていた。


「どこか痛いのか?」

顔も見せてくれないし、かといって逃げ出す様子でもない。

俺はどうしたらいいのか分からなくなってしまった。

とりあえず俺の手につかまって立ちあがる気はなさそうなので、差し出した手は引っ込める。

もしかしたら俺のことが怖いのかもしれない。顔も上げないし。

それならいっそ、俺はこの場から立ち去ったほうがいいのかもしれないけど……。


「……なぁ、どこか痛めたのか?」

考えた末、そのまま彼女を置き去りにする決心はつかなくて、俺はさっきと同じ問いを繰り返しながら、せめて目線をあわせようと彼女の前にストンとしゃがみこんだ。

……瞬間。


「っ!」

今まで身動きひとつせずにじっとしていた彼女が、しりもちをついた体勢のまま、片足のかかとで地面を引きずるように蹴り、ずさっと後ずさりした。

強い拒絶を示すその行動に、さすがに驚いて目を瞠る。
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