空のこぼれた先に
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街を出るまでには、それほど時間を要しなかった。
途中、走りにくそうなヒールのあるパンプスを履いていた令嬢のために、ヒールの低いブーツと動きやすい服を買って、店で着替えさせる。
店の外で待っていた俺の前に現れた、買った服に着替え終わった令嬢は、さきほどまでの外套は着ていなかったけれど、新しく買った外套のフードをかぶっていて、やっぱり顔を見せてはくれなかった。
「……フレイと、知り合いだったの?」
街は、南側を海とする以外、隣町までは深い森を抜けなければならないような場所にある。
西の街道を通り、森を抜けて王都とは反対の方角にある街へ行くのが一番、隣町までの距離がない。
おそらく令嬢には長い道のりを歩きとおせるほどの体力はないと思うし、俺としてもそこまで旅に慣れているわけでもないので、まずは西を目指すことにした。
街を出て森の中を歩いている途中、すぐ後ろを歩いていた令嬢が、ふいに声をかけてきたのは、フレイのことだった。
……まぁ、そうだよな。
この令嬢にしたって、フレイに言われたから、俺みたいな身元もはっきりしないような男に付いてきているわけで。ある意味、命を預けているわけで。
フレイがどうして俺にそんな大役を託したのか。気になるよな。