【完】シューティング★スター~バスケ、青春、熱い夏~
終了19秒前。
諦めない慧心。勝利を過信しない水高。
柏原の素早いパスワークでスティールする間もなく、オフェンスで押される。
だが、残り5分まで待たされたゴール下の番人泰ちゃんは、いつも以上にどっしりとゴール下に構えていた。
これでもか、というくらいに高く飛んだ相手フォワードに対し、泰ちゃんも全力で叩きにかかる。
慧心フォワードは体を空中で一度縮め、最高到達点から落ち始めた頃に、手からボールを放つ。
「くっ……………ヌゥ!(届け!!)」
泰ちゃんは、フロアに落ちていく体を精一杯に伸ばし、ボールを落とすことを諦めない。
触れたか触れてないか、見た目には分からないまま着地する、慧心フォワードと泰ちゃん。
視野範囲だけじゃなく、動体視力も人よりいい俺は、微かな違いを感じていた。
泰ちゃんの指が、ほんのちょっとだけ霞めたおかげで変わった、ボールの回転速度を。