【完】シューティング★スター~バスケ、青春、熱い夏~
楽しかったカラオケ大会も、フリータイムが終わり解散になる。
もしかしたら、行雲先輩なりに本選への緊張をほぐす為の会だったのかな…なんて思いながら、暮れてきた空を見て歩く。
「小鳥遊!」
そんな俺を引き留める声に、ゆらりと振り返る。
そこには、真剣な顔をした、有ちん先輩の姿。
確か、有ちん先輩は秀吉キャプテンと同じで植木駅付近に住んでて、熊本駅行きの市電に乗ったから、こっちは有ちん先輩にとって家とは逆の筈なんだけど。
「どしたの、有ちん先輩?」
「…………小鳥遊、俺と、1on1してくれんか?」
いつもなら、きっと夕方には走り込みをしている有ちん先輩の、初めての誘い。
明日は東京前乗りだし、断った方がお互いのクールダウンの為になるんだけど。
その、銀フレームの奥の真剣な目と、合宿の時のおじいちゃん監督の『心の奥に眠るもの』という発言を思い出し、俺もきゅ、と顔が引き締まる。
「…俺んち、来ます?」
その返事に、有ちん先輩の顔が少しだけ、傾き始めた陽を吸い込みながら、和らいだ。