【完】シューティング★スター~バスケ、青春、熱い夏~
有ちん先輩は基本がしっかりしているうえに、体力もあるから、オフェンスも堅実。



纏まったプレイだから、部員に見習って欲しいところも凄く多い。



それ故…やりやすい。



1on1は周りを見なくても済む分、相手に集中出来るから、ピカ先輩みたいなスタープレイヤーでも勝てることもある。



実際、ピカ先輩相手との1on1は、50/50の勝率だ。



俺は長いこと1on1だけを親父と繰り返していた選手だから、特にこれに関しては、抜かせないし止めさせない。



有ちん先輩がステップに二つ、ハンドリングに一つ、それぞれフェイクを入れ抜きにかかってくる。



「そんなんじゃ、俺は出し抜けないよ」



それを冷静に、左側にドリブルをついたタイミングでカットする。



バチィィン!!



ボールが縁側の方に転がり、トントントン、と音を立てながらバウンドしていく。



「……やっぱり、俺じゃ小鳥遊みたいにスピードと技巧で抜くんは無理やったな」



寂しそうに笑う有ちん先輩に、胸がチクリ、と痛み、だけど、何も言い返せない。



「次、小鳥遊のオフェンスの番な」



「…………うん」



気にしてない、と思っていたけど、もしかしたら、秀でた才能のない自分を誰よりも下に見て抱え込んでいたのは、有ちん先輩本人なのかもしれない。
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