【完】シューティング★スター~バスケ、青春、熱い夏~
「俺は、思えば嫉妬ばかりや。一番最初は、冷泉に嫉妬しよった」



転がったボールを拾いながら、有ちん先輩が話し出す。



「幼稚園からずっと一緒で、昔から美形で、人気があって。俺が近所のミニバスチームに入った時も、引っ付くようにして着いてきたのに、すぐに抜かされて…」



「うん」



有ちん先輩の中に眠り続けた、苦くて、人によっては汚いとも感じる、感情の渦。



「ずっと羨ましかった…なんで、俺やないんやろうって。でも、バスケを好いとる気持ちは変わらんけん、高校まで頑張った。その高校で次に嫉妬したんは…曜」



数えたらきりのない程の感情を、吐き出すように言葉を紡ぐ有ちん先輩に、小さな相槌を打つことしか出来ない。



「曜は俺より小さかとに、大きかった。越えられんかった。一年経って、体格と身体能力に恵まれた行雲が来て、春休みには、どっしりとゴール下を守る仇野が現れて、また嫉妬した。何で、どいつもこいつも俺が欲しかものを持っとるんやろうって」



そして、そんな感情を押し殺して過ごし、フォワードからガードにポジションが代わった、今年。



「今、俺が嫉妬しとるんは…小鳥遊、お前ばい」



ぽっと出の俺に、努力して掴んだベストメンバーの座を取られた有ちん先輩の気持ちは、きっと誰にも分からない。
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