【完】シューティング★スター~バスケ、青春、熱い夏~



うちに帰り、仕方ないからうちにあった安い卵で、卵黄と卵白に分け、パンケーキを作る。



『ナイスリバウンド!』



『アウリープ返し大成功!』



ぐるぐる、ぐるぐる、ぐるぐる。



頭の中で巡るのは、今日のあのミニゲームのことばかり。



カシャカシャカシャ…



「おー、お菓子作り中に注意力散漫の椿、珍しいじゃん」



「あ、親父、お帰り」



両親が小さい頃に離婚したせいで、たった一人の家族の、俺の親父。



「親父………1on1より楽しいこと、見つけたかも」



「へーえ。椿、やっと気づいたの?バスケの良さに」



痛いし、辛いし、しんどいし、お菓子作りの時間が削れるのは目に見えてるけど。



「…忘れられない。ボールを回す瞬間。一人じゃ出来ないことも、他の駒を使うことで、出来る。まだ、ドクドクするんだ、心臓が」



「そうか、お前はガードか。良いじゃん?やってみなよ、バスケ」



そしたら、満たされるのかな、この、心臓の奥の、熱い塊が。
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