あなたの虜ーバンパイアとわたしの秘密の関係ー
『私のアルト様』
そこだけが頭のなかでリピートされる。
大丈夫……気にしない…気にしない!
気にしちゃ…だめ!!
わたしは、頭の中の声を振り払うかのようにすっくと立ち上がった。
「楽々?」
わたしがいきなり立ち上がったから、綾香は、驚いていた。
「もうすぐ出番だから……行ってくるね?」
わたしは、体調不良のことも忘れて走っていた。
お姫様のことは…忘れたい……
消し去りたい……
わたしから……彼の記憶から……
いっそのこと……
イナクナレバイイノニ…………
っ!?
わたし……今、なんて………?
走っていた、足を止めた。