あなたの虜ーバンパイアとわたしの秘密の関係ー
「楽々!!」
何が起こったのかわからなかった。
ただ、綾香の驚く顔と綾香の差し出す手が、スローのように見えた。気がついた時には、もう、線路の上だった。
『帰れ』
あの声がまた頭の中に響いた。
もしかして……これのこと?
電車が来るってわかっているのに……怖くて立ち上がれない。
もう、ダメ!!
――――――――――
†綾香side†
楽々と、明日から来る転校生のことを話していたら、いきなり楽々がホームから落ちた。
咄嗟に手を伸ばしだけど……届かなかった。
楽々がスローで落ちて行くのをただ、見ているだけだった。
「楽々!!」
叫んでも返事がない。
もう、電車が来るのに……動けない。
「えっ……?」
わたしが動けずにいると、目の前を黒い何かがホームから飛び降りた。
その数秒後……電車が目の前を通った。
楽々……楽々…!!
無事でいて……!!
わたしは、急いで駅員さんを呼びに言った。