あなたの虜ーバンパイアとわたしの秘密の関係ー




「楽々!!」



何が起こったのかわからなかった。

ただ、綾香の驚く顔と綾香の差し出す手が、スローのように見えた。気がついた時には、もう、線路の上だった。




『帰れ』



あの声がまた頭の中に響いた。

もしかして……これのこと?



電車が来るってわかっているのに……怖くて立ち上がれない。



もう、ダメ!!








――――――――――







†綾香side†



楽々と、明日から来る転校生のことを話していたら、いきなり楽々がホームから落ちた。


咄嗟に手を伸ばしだけど……届かなかった。



楽々がスローで落ちて行くのをただ、見ているだけだった。




「楽々!!」



叫んでも返事がない。


もう、電車が来るのに……動けない。




「えっ……?」




わたしが動けずにいると、目の前を黒い何かがホームから飛び降りた。



その数秒後……電車が目の前を通った。




楽々……楽々…!!
無事でいて……!!



わたしは、急いで駅員さんを呼びに言った。













< 28 / 170 >

この作品をシェア

pagetop