窒息寸前、1秒
「え…。」
ということは、隆弘は自分に好意を持っていると知りながら、由梨子さんと一緒にいるってこと?
自分を好きだと知ってて一緒にいるってことは…。
隆弘も…。
「もう、信じられなくなったんじゃない?」
そう言った、先輩の唇は綺麗な弧を描く。
さも、可笑しそうに。
でも、冷淡に。
「先輩の目的はなんですか?」
私にここまで話したからには、何か目的があるはず。
たまたま何て言っているけど、今私が先輩の前に居ることはすべて先輩の計画通りなんだ。
「目的は、最初にちょっと言ったけど、俺たちが浮気して隆弘と由梨子にも同じ思いをさせてやろうってこと。」
「私は浮気なんて、できません。しかも、そんなことが目的なんて納得できません。」
「どうして?言ったよね?俺はね、由梨子が大切だけど憎い。父を苦しめるため、俺との婚約を利用して。俺の気持ちを知っているくせに、隆弘とのことも隠さない。由梨子は残酷なんだ。」
ただただ淡々と話す先輩。
まるで他人事のように。
「だからといって、復讐しても何も生まれないってことは、先輩が一番よく分かっているんじゃないですか?」
そう、先輩が一番よく分かっているはず。
由梨子さんのお父さんへの復讐に利用された先輩なら、分かるはず。
「教えてください。本当は何が目的なんですか?」
黙ったままの先輩に、私は問いかける。