窒息寸前、1秒
「あれ?花那ちゃん?」
後ろからそんな声が聞こえてきて、正直振り向きたくない。
私が黙ってうつ向いていると、
「孝輔先輩!」
嬉しそうに、中村さんが孝輔先輩に駆け寄った。
「あれ、昨日の子?」
「はい!覚えててくれたんですかぁ~?うれしい!」
中村さんの切り替えすごいな…。
さっきまで私を威圧していたというのに。
唖然と中村さんと先輩の会話を聞いていると、
「花那ちゃん、何してたの?」
そんな私に気づいたのか、孝輔先輩が声をかけてくれた。
「孝輔先輩こそ、何してるんですか?」
自然と控えぎみになる、私の声。
嬉しいんですけど、今声かけられたら…。
孝輔先輩の隣から私にガン飛ばしてくる中村さん。
やっぱりね。
それにしても、かわいい子がやると余計怖いな…。
「俺は、また河谷先生に頼まれちゃって。部活だよ。」
「あぁ、だから。」
サッカーボールを持っている先輩。
私たちが居る中庭の片隅に体育倉庫がある。
「あぁ、そうなんですか。」
「花那ちゃん、友達?」
「え、あの…いや…。」
鋭いところつくな…。
先輩のことで呼び出されましたなんて言えない。
私がなにも言えずにいると、
「そうなんです。お友達になったんですっ!」
中村さんが言った。
もちろん可愛く。
「そうなんだ。花那ちゃん?」
先輩は優しく微笑む。
先輩は、たぶん全部気づいている。
でも…。
「そうです。」
やっぱり、何だか本当のこと言うのは可哀想で。
頷いてしまった。