窒息寸前、1秒




「聞いてる?すごくムカついたんだよ?」




「はいはい。聞いてますよ。」




大学の友達の愚痴を言う先輩に、笑って軽くあしらう私。



それから、私と先輩は2日に一回くらいのペースで会っている。



先輩ともだいぶ打ち解けた。




そして、会う日は決まって、隆弘が由梨子さんと会う日。



先輩はどうしてか分からないけど、ふたりが会う日を事前に知ることができるらしい。



由梨子さんが、直接先輩に言うのだろうか…。




「聞いてないでしょ?」



先輩は拗ねたように軽く私を睨む。



「すみません。それで先輩は何て言ってやったんですか?」




「よくぞ聞いてくれました!」




すぐに機嫌がよくなる先輩に、苦笑いして目線を外にやる。



なんか、落ち着かないな…。



また、先輩に話聞いてないって怒こられちゃうかな。



「心ここにあらずって感じだね?」




「へ?」




いつそんな話題になったのだろうか。



いつの間に、大学のムカつく友達の話は終わったのかな。



「気にしないで。なんとなくわかってるつもり。」



「私…。」



寂しそうに目を伏せる先輩に、何も言えなかった。



先輩の方が辛いはずなのに。



本当に私は馬鹿だ。



今日は由梨子さんの誕生日…。




由梨子さんは、先輩ではなくて、隆弘と過ごすことを選んだ。


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