窒息寸前、1秒




「ごめんね。帰ろうか。」



うつむく私に、声をかけた先輩。



顔をあげると、申し訳ないという顔で。



いつもの、先輩に戻っていった。




「はい。」



「送るね。」




「ありがとうごさいます。」




いつもと何ら代わらない、先輩との帰り道。



いや、適度に会話を交わしていつも通りを装っていたのかもしれない。



頭からさっきの冷たい顔をした先輩が、離れないのに。



触れちゃいけない。



触れたら…。



もう、先輩は会ってくれない。




なんとなくそう思った。




< 66 / 89 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop