窒息寸前、1秒



「ありがとうごさいました。」



「こちらこそ、ありがとう。」



私の家の前。



軽くお辞儀をする私に、先輩は笑う。



いつも通り。



「じゃあ、またね。」



「はい。また。」



去っていく先輩の後ろ姿を見ながら、実感する。



私は、わかったつもりでした。



先輩のこと、少し近く感じて歩み寄れたと勝手に思って。



何にも分かってなかったのに。



先輩が、色々な意外な一面とか見せてくれるから、勘違いして。



私に気を許してくれてるんだと。



一緒にいてもやっぱり、私と先輩はひとり。



ずっと何があっても、変わることのない距離。



友達というキズのなめあいのが終わるまで。



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