窒息寸前、1秒
「由梨子こそ、本当は何してるの?お父さんと過ごすからって俺の誘い断ったのにね。」
「え…。姉さん、そんな話…。」
反撃に出た先輩に、隆弘がいち早く反応する。
「たっくん、違うのよ。」
「何で、孝輔先輩の誘いを断ってまで…俺なんかと。」
一気に由梨子さんと隆弘くんの間に、険悪な空気が漂う。
先輩の一手はとても有効だったようだ。
「隆弘、良いんだよ。俺が誘ったのは昨日だったから。もう隆弘と約束した後だっただろうし。由梨子は先約を優先したいタイプだしね。」
「でも、孝輔先輩は婚約者で…。」
だけど急に由梨子さんの肩をもつ先輩。
隆弘はやっぱり納得いかないみたい。
「俺は良いと思うよ。由梨子のそういう所。」
にこりと笑った先輩だけど、その表情からは何の意図も読み取れない。
隆弘もそこまで先輩に言われたら、何も言えないみたいだ。
由梨子さんを追い詰めたり、庇ったり、好きだと言ったり、冷たくしたり。
先輩のことがますます分からなくなってきた。