窒息寸前、1秒



「由梨子こそ、本当は何してるの?お父さんと過ごすからって俺の誘い断ったのにね。」



「え…。姉さん、そんな話…。」



反撃に出た先輩に、隆弘がいち早く反応する。



「たっくん、違うのよ。」



「何で、孝輔先輩の誘いを断ってまで…俺なんかと。」



一気に由梨子さんと隆弘くんの間に、険悪な空気が漂う。



先輩の一手はとても有効だったようだ。



「隆弘、良いんだよ。俺が誘ったのは昨日だったから。もう隆弘と約束した後だっただろうし。由梨子は先約を優先したいタイプだしね。」



「でも、孝輔先輩は婚約者で…。」



だけど急に由梨子さんの肩をもつ先輩。



隆弘はやっぱり納得いかないみたい。



「俺は良いと思うよ。由梨子のそういう所。」



にこりと笑った先輩だけど、その表情からは何の意図も読み取れない。



隆弘もそこまで先輩に言われたら、何も言えないみたいだ。



由梨子さんを追い詰めたり、庇ったり、好きだと言ったり、冷たくしたり。



先輩のことがますます分からなくなってきた。



< 77 / 89 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop