窒息寸前、1秒
「急にごめんね?」
「いえ…。」
ハーブティーを片手に綺麗な笑顔を私に向ける由梨子さん。
「今日はね、孝輔のことで。」
「先輩とは何もありません。たまたま会っただけですから。」
ろくに話も聞きもせず、即答する。
由梨子さんは相変わらず余裕の笑み。
先輩とはあれから一週間たつが一回も会ってない。
連絡すらとっていない。
あの日先輩は謝罪も否定もせず、走り去る私をただ見ていただけだった。
時間がたつにつれて、冷静になる。
やっぱり、先輩は目的があって私に近づいてきて、優しくしてくれて。
利用しようとしていた。
おもいあがっていた、バカな私。
「でも、私は見たの。花那ちゃんと孝輔が抱き合っているところ。」
「見間違いでしょう。ありえません。」
本当は、こんな言い訳通用しないこともわかってる。
だけど、否定しないといけない。
否定しないと、拒まなかった自分を思い出してしまう。
「ふふっ。口だけなら何とでも言えると、思ってね。ほら。」
由梨子さんが差し出してきた、スマートフォンには抱き合う男女の姿が写っていた。
私と先輩。
紛れもない証拠。