窒息寸前、1秒




「花那ちゃんは、隆弘のことが好き?」



真剣な眼差しを私に向けてくる由梨子さん。



急な由梨子さんの変化に狼狽えてしまう。



「…え?」



「ふふっ。当たり前よね。気にしないで。」



クスリと可笑しそうに笑う由梨子さん。




急に突拍子もないこと言い出して、どうしたのだろう。




「私はね、隆弘が好きなの。」



はっきりとした由梨子さんの意志がひしひしと伝わってくる。



由梨子さんの言葉が胸にささる。



「…はい。」



「花那ちゃんはとっくに分かってたでしょう?」



「はい。」



分かってた。



分かってたけど、認めたくない自分も居たのも事実で。



私の思い込みであってほしいって心のどこかで思ってて。



由梨子さん本人からはっきりと言葉にされて、はじめて気づいた。



甘い自分の考えに。




それなのに。



「先輩とは、どうするんですか?」



どうして。



私を利用しようとした人のことがこんなに心配なんだろう。




< 86 / 89 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop