窒息寸前、1秒
「孝輔とは、ゆくゆくは結婚するでしょうね。」
「復讐のために?」
「あら、孝輔から聞いたのね。」
軽い話題かのように答える由梨子さん。
先輩が、私に話すと分かっていたみたい。
「復讐のために、先輩を利用するんですか?」
自然に出てきた言葉。
本当に私はなんで。
先輩が私に近づいてきたのも、優しくしてくれたのも全部、今目の前にいる由梨子さんのためなのに。
由梨子さんに利用されるのを望んだのは先輩なのに。
「花那ちゃん、何か勘違いしているみたいね。」
愉しそうな笑みを浮かべる由梨子さん。
「何をですか?」
「孝輔は私にとって大切な人なの。」
「じゃあなんで…。」
「花那ちゃんは、孝輔のこと全部知ったつもりになってるのね。」
綺麗な唇をつり上げて笑う由梨子さん。
「…そんな。」
「花那ちゃんは孝輔の何も分かってないのよ。孝輔は、望んで私のそばにいるの。私が誰を想おうとね。」
「…そんなの、分かってます。」
分かってるよ。
先輩は、由梨子さんのためなら何だってすることも。
何だって耐えられることも。
「いいえ。分かっていないわ。」
「…え?」
「私は孝輔を解放してなんかあげないわ。誰にも渡さないわ。花那ちゃんにも、ね。」