窒息寸前、1秒
出口へ向かって行く由梨子さんの背中を見つめる。
綺麗にぴんと背筋が伸ばされた、華奢な背中。
由梨子さんはその背中に一体何を抱えているのだろう。
結局私はたいしたことは、なにも言えなかった。
全部由梨子さんの言う通りで。
全部私も分かってたこと。
先輩のことなんて心配する必用なんて、ない。
先輩は由梨子さんといれればいいんだ。
だけど。
『俺は由梨子を大切に思ってる。』
『花那ちゃんは優しいね。』
『由梨子に復讐したいと思ってる。』
どの先輩の言葉も嘘じゃない気がするの。
自分に都合良いように考えたいだけかもしれないけど。
でも、由梨子さんも先輩のこと大切に思ってるんだよ。
私に優しくしてくれたのも、復讐したいとか言ったのも、私を利用するための手段なんだよ。
冷静に考えれば簡単に分かることなのに。
私は拒否してるんだ。
先輩の言動が全て嘘で、全て由梨子さんのためだったことを。
私は心のどこかで、まだ先輩のことを信じたいと思ってしまっているんだ。