顔が分からない貴方へ
なんたってここは、
不良校として有名なんだから。
コンコン、
「失礼しますよ~」
気が抜けるような声が聞こえた。
声がした方をみると男の人がいた。
理事長とは違う明るい茶髪。
理事長は黒髪を軽く後ろに流していて、
大人の大人って感じ。
でも茶髪の人は無造作に遊ばせていて、
大学生くらいに思える。
「早かったね、佐沢」
「そりゃあな。楽しみだったんだから」
楽しみって。
転入生のことが?
えっ、私全然面白くないんだけど。
期待に答えられないんだけど!
「紺野さん、彼が担任の、」
「佐沢広樹だ。よろしくな」
そんな事を思っていると彼は理事長の
言葉を遮りながら自己紹介をした。
そんな彼の白いシャツにも名札がある。
「よろしくお願いします、広樹先生」
ペコッと頭を下げると私の自慢の髪が
肩から流れ落ちる。
この学校に合わせて初めて、染めた。
真っ黒の髪を黒に。
あまり変化はないけど。
他の人みたいな自然な黒ではない。
暗闇みたいな、異様な黒髪。
茶髪とかより黒髪が似合うはずの私に
ピッタリの色で気に入ってる。
「それじゃ、また遊びに来てね」
理事長の言葉と共に、
広樹先生と私の教室に向かう。