顔が分からない貴方へ
私は高校一年生だから教室は2階。
学年ごとに上がっていく仕組みらしい。
一階は理事長室や職員室、保健室など。
って、パンフレットに書いてあった。
でも五階建てなのに
なぜか四階までしか説明がなかった。
広樹先生に聞いてみようとしたら、
「お前、大丈夫か?」
先に質問されてしまった。
理事長も先生も私が心配らしい。
そこまで心配しなくても大丈夫なのに。
「大丈夫です!たぶん」
「たぶんかよ!なんかあったら話せよ」
「ありがとうございます、広樹先生」
ニコッと笑いながら言った。
きっと。
私は今、理事長に会っても分からない。
なにしろ、“顔が分からない”のだから。
「教室はここだ」
一年C組、と書かれた教室は廊下まで中の声が響いてる。
…まあ他の教室も同じだったけど。
「あまり他のやつらと仲良くするなよ」
「え。なんでですか?」
仲良くするなよって。
普通は逆じゃない?
みんなと仲良くな!っみたいな。
「顔、分からなくなるだろ」
たしかに。
でも、
「いつも分からないんで大丈夫です」
そんなの、今さらだ。
「っ、でも、」
「広樹先生の事も残念ながら、
名札がないと分からないですし」
名札がなければ私には誰か分からない。
そう言うと広樹先生は顔をしかめた。