顔が分からない貴方へ



「…呼んだらこいよ」



広樹先生はそう言って教室に入った。



そんなに悲しい顔しなくてもいいのに。

“顔が分からない”だけでその人の特徴を
認識すれば見分けることもできるし。


広樹先生とは初めて会ったから、
まだ見分けられないけど。



「先生ー、転校生は美人?」

「あー、美人だとは思うぞ」

「彼氏、いるかな?」

「先生ーまた女子?イケメンがいい!」

「だよね、イケメン欲しいー」

「知らねぇよ!」



…先生大変そう。

てか、私イケメンじゃない。

美人ってほどでもないし。

先生も嘘を言わないで!

一人で焦っていると、

「紺野入れー」



中から先生が呼んだ。

しかも何故か教室が静かなんだけど!?

さっきまでうるさかったじゃん!

静かにしなくていいんだけど!?


今すぐに逃げたいけど、
結局は入らないとダメだし諦めよう。




「失礼します」


教室に入るとみんなの視線がささる。


色とりどり。


一言で言うとこの言葉がピッタリ。


女子は金髪やら茶髪やら。

男子は…ありえない。


金髪や茶髪はまだ普通だとしよう。




でも、なんで緑や紫!?

アニメのマネみたいで厨二病っぽい。



「紺野、挨拶しろよ」



はっ!

つい見とれてしまってた。

最初が肝心なのに、失敗した。



「初めまして紺野彩葉です」



一礼して教室を見渡す。

クラスの人達は私に目が釘付けだ。

まあ、成功かな?



「みんなと楽しく
青春を過ごしたいと思ってます!」



女子に嫌われないように。

嫌われると面倒だし。



「因みに彼氏は非募集中です!」



特に。

恋人とかの問題に気を付けないと。



「彩葉って呼んでください!」



ニコッと、笑う。


たぶん、これで女子から睨まれない。



その証拠に、ほら。


「よろしくー♪」

「彩葉ちゃんって呼んでもいー?」

「非募集中って、面白ーい!」

「仲良くしてね♪」

女子から、声がかかる。



「よろしくーね!
先生、私の席は何処ですかー?」

「あ、ああ。好きなとこ座れ」



好きなとこって。

いい加減だな、おい。

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