腹黒王子は誘惑中
そしてあたしは一つの答えにたどり着く。


「里中君、もしかして寒いんですか?」


今は6月。


梅雨入り前だけど、少し肌寒い日が続いている。


人で暖をとる程の寒さではないと思うんだけど……。


「え、あ、うん。僕、ちょっと寒がりだからね。だから、温めて?」


あたしを抱きしめる里中君の腕に少し力が入る。


え、そんなに寒かったの?


えっと、確かポケットに入ってたはず。


あたしはポケットの中を探り、カイロを出す。


「寒いなら、あげますよ?」


あたしは里中君にカイロを差し出した。


里中君は若干引きつり気味でそれを受け取った。


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