イジワルな彼の甘い罠
「……久しぶり」
やってきた航の家で、ガチャリと開けたドアの向こう。
そこには、冷蔵庫を開けビールを飲もうと缶に手をかけているその姿があった。
「おう、早かったな」
「まぁね。航は今日休みだったの?」
「朝方から仕事で今帰ってきたんだよ」
答えながら缶を開ける航の手元からは、プシュッと炭酸の美味しそうな音が聞こえた。
「あ、私にもビール」
「あー……、けどその前に」
靴を脱いで早々、その手は私の体を壁へ押し付ける。
「わ……ちょっと、いきなりなに?」
問いかけに答えることもなく、与えられるキス。触れる唇からは、煙草の苦い味がした。