イジワルな彼の甘い罠
「一週間なにしてた?」
なにげなく問いかけると、航は冷蔵庫のドアをまた開けて、缶を一本取り出しながら答える。
「仕事。お前は」
「仕事に決まってるでしょ。大阪まで行って観光もしないで、毎日毎日朝から晩まで仕事仕事仕事の激務だったよ……仕事で出張してるから当たり前なんだけどさぁ、それでもさすがにきついっていうか……」
「お、おう……」
あの目の回るような激務を思い出し虚ろな目でボヤいた。
それを聞きながら航は、先ほど開けた自分の缶と私の分の缶をテーブルに置くと、私の右隣へ座る。
自然と漂う無言の空気に、つけられたままのテレビの音だけが部屋に響いた。