イジワルな彼の甘い罠



「なんだよ、コレ」

「え?、……!」



最初は意味がわからなかったものの、その視線に首元のキスマークのことを思い出す。



しまった……。

ハッとしては首元を手で隠す私に、その目は不機嫌にこちらを睨んだ。



「……仕事って言いながら向こうで男でも作ってきたってか?」

「違う!!」

「じゃあなんだよ」



素直に言うべきだろうか、どこからどう説明するべきだろうか。そう悩むと、つい言葉は喉で詰まってしまう。



「これは……その、」

「……一緒に行った男か」



『一緒に行った男』、そう八代くんの存在を鋭く言い当て静かに問う声に、黙って視線をそらしてしまう。

そんな態度に痺れを切らしたように、その拳がダンッ!!とテーブルを殴ると、テーブルの上の缶は倒れ、カーペットにビールのシミが広がった。



< 108 / 215 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop