イジワルな彼の甘い罠
「なんだよ、コレ」
「え?、……!」
最初は意味がわからなかったものの、その視線に首元のキスマークのことを思い出す。
しまった……。
ハッとしては首元を手で隠す私に、その目は不機嫌にこちらを睨んだ。
「……仕事って言いながら向こうで男でも作ってきたってか?」
「違う!!」
「じゃあなんだよ」
素直に言うべきだろうか、どこからどう説明するべきだろうか。そう悩むと、つい言葉は喉で詰まってしまう。
「これは……その、」
「……一緒に行った男か」
『一緒に行った男』、そう八代くんの存在を鋭く言い当て静かに問う声に、黙って視線をそらしてしまう。
そんな態度に痺れを切らしたように、その拳がダンッ!!とテーブルを殴ると、テーブルの上の缶は倒れ、カーペットにビールのシミが広がった。