イジワルな彼の甘い罠
「ちょっと電話してくるわね」
「へ?どこに?」
「ナ・イ・ショ」
ハルミのその不敵な笑みに少し嫌な予感を感じつつ、私はおとなしくグラス片手にその場でハルミを待った。
そして、ハルミが電話を終え、席に戻ってきてから数十分後。
「ハルミ。待たせた」
「あ、玲ちゃん!こっちよ〜」
そこにやってきたのは、スーツ姿にメガネと真面目そうな身なりをした彼、玲ちゃん……こと同級生の澤村玲二くん。
それと、彼に連れられてきた航。
どうやらふたりは一緒にいたらしく、それを分かっていたハルミの呼び出しによりやってきた、ということらしい。
私が一緒にいることは航には言っていなかったのであろう、その顔は私を見ては「げっ」と嫌そうに歪む。
「……俺帰る」
「まぁ待ちなさいよ。折角同級生同士で会ったんだから」
逃げようとするもののすかさずハルミに捕まえられ、航は渋々席へついた。
私の隣にはハルミが移り、向かいに澤村くん、航……と4人掛けの席が一気に埋まる。