イジワルな彼の甘い罠
「なに飲む?」
「俺はビールで」
「どうせ航もビールよね。すみませーん、ビールふたつ〜」
注文をするハルミの声を聞きながらチラ、と見れば、目の前にはスーツ姿でビシッと決めた澤村くんが座っている。
メガネをかけた賢そうな印象は高校の頃から変わらない。
……航と並ぶと対象的すぎて一層際立つなぁ。
そう思わずにはいられないほど、隣のその姿は相変わらずの無精髭でだらしない。
私の斜め前に座る航は、顔を思い切り外側へ背け、目を合わせようともしない。
ふてぶてしいその態度に、イラッとしながらグラスのお酒をまたひと口飲んだ。