イジワルな彼の甘い罠
「あー!飲んだー!」
「飲んだ飲んだー!」
そしてそれから数時間が経ち、日付をとっくに越えた夜の街で私とハルミは伸びをしながら声を発した。
話すうちにお酒は進み、すっかりフラフラな足取りになっていた私とハルミは、完全に酔っ払い状態だ。
「……そういえばお前たちは俺たちがくる前から飲んでいたんだったな」
「そうよー、アタシも早希もかれこれ6時間は飲んでたわよ〜」
ハルミは航に肩を組み、お酒くさい息をハーッと吐きかける。
まるでおじさんのようなその態度に、航の顔が思い切り嫌そうなものになると、ハルミは満足したように航から手を離す。
「仕方ない、ハルミは俺が送ろう。航、唯川を頼む」
「は!?なんで俺が……」
言いながら澤村くんは、高いヒールでフラフラと不安定に立つハルミの肩を抱き男らしく支える。
「それとも逆がいいか?」
「ヤダヤダ!こんな無精髭男より玲ちゃんに送って貰いたい〜!」
「俺だって嫌だわ!!わかったよ、こいつ送って行くよ!!」
ハルミが気を利かせてふたりきりにしてくれたのか、それともただ酔っているだけか……どちらかはわからない。
けれど頷いた航に、ふたりはじゃあと手を振りタクシーに乗り去って行った。