イジワルな彼の甘い罠



すると、不意にヴー、と鳴ったスマートフォンを見れば、そこには『受信メール一件』の文字が表示される。



「ん?」



あれ……航から?

不思議に思い開いたメール画面には、『やっぱり今日なし』の簡潔な文。



なし……ってことはキャンセル?珍しい。っていうか、初めてかも。

なにかあったのかな?急な仕事、もしくは友達との予定が入ったとか?



そう不思議に思いながらも、キャンセルの理由を細かに伝えたりしないところがまたあいつらしいとも思う。

仕方ない、なら今日は大人しく帰るか……。

そう歩き続けていれば、視界の端に入るのは通り沿いの道路で信号待ちをしている車。


あれ、あの車……?



見慣れた黒いミニバンの、ナンバー『1010』に、その車は間違いなく航のものであることを確信する。


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