イジワルな彼の甘い罠
……あぁ、こういうこと?
だから『今日はなし』?
そりゃあそうだよね。いくら私が先約でも、相手があの子なら向こうを優先するよね。
「……はは、」
乾いた笑いをこぼすと、残りの気力を振り絞るようにして家へ向かい歩き出す。
……あー……くだらない。
なんか、吹っ切れた。
『いつかやめる』、『いつかどうにかしなきゃ』、そう思いながらズルズル続いてきた。
というのも、いつも口ではなんだかんだと言いながら、航には他に女の影なんて見えなかったし、この心の奥底には、期待する気持ちもないわけじゃなかったから。