イジワルな彼の甘い罠
「そこまで怒らなくたっていいじゃん……」
その時、ページとページの間に挟んであったのだろう写真が、一枚はらりと落ちる。
床に落ちたそれに自然と目を向ければ、そこに写るのは微笑む金髪の女の子……そう、昨夜航とホテルに入っていった、あの子の姿だった。
航はその写真を拾うと、再度クリアファイルの間に素早く挟み、鞄の中にしまい込んだ。
……触っただけで怒るくらい、大切な写真ってこと。
その行動に、昨日の気持ちが蘇る。
苦しい、痛い、悲しい
黒い 嫉妬心。
「……そんなに大切?」
つぶやく言葉が、静かに部屋の中に響く。
「クリアファイルに写真入れて持ち歩くくらい、その子が好きなんだ?」
「……は?おい、なに言って……」
「そんなに大切な人がいるなら、私なんかと関係持ってちゃダメでしょ」
精一杯気持ちを抑え、「はは、」と作り笑いをしてみせる。