イジワルな彼の甘い罠
ダメ、でしょ。
大切なら、その子だけ見なきゃ。
暇潰しに関係持った、こんな女の相手なんてもうやめなよ。
私も、もうやめるから。
もう、いらない。いらないから。
「やっぱりやめる。……もう、航とは会わない」
「早希……?」
つらい思いをするセフレなんて
もう、いらない
「もう、おしまい」
それだけをつぶやくと、バッグを持ち再び玄関へと向かう。
「おい、早希!?待てよ!」
そんな私の腕を引っ張り、足を止めさせようとする航に、私は強くその手を振り払う。
「……お互い、いつまでも遊んでいられないでしょ」
冷たく突き放すような言葉。
それだけを言うと、私は靴を履き、つい先ほど入ったばかりの家を後にした。
言っちゃった。
いつか終わりを告げられたら、なんて思っていたのに、自分から終わりにしちゃった。
……あそこまで見ちゃったら、終わりにするしかないじゃんか。
航にとってあの子は、私より優先するべき存在。
わざわざファイルに写真なんて入れて、持ち歩いて、触っただけで怒るくらい、大切にしてる。
これだけ揃えば、さすがに私でもわかる。
希望なんて、僅かもないこと。