イジワルな彼の甘い罠
「なにか食べたいものはあるか?」
通り沿いに並ぶいくつもの飲食店を前に、澤村くんは率先して歩きながらもこちらへ問いかける。
「うーん……あっ、沖縄料理って平気?」
「あぁ。あまり食べたことはないが」
「じゃあここのお店にしよ。沖縄料理好きなんだよねー」
私の要望で入ったお店は、この辺りでは少ない沖縄料理のお店。
隠れ家のような雰囲気の、ほんのりと灯りのついた店内で、私と澤村くんは通された席に向かい合って座った。
「えーと、ゴーヤチャンプルーと海ぶどう、ミミガーと泡盛のカシスソーダ割りで。澤村くんは?」
「……同じ物で」
「かしこまりましたー」
メニューを広げ早々と注文を済ませ、去っていく店員に、澤村くんはおしぼりで手を拭きながらこちらを見る。