イジワルな彼の甘い罠
「随分慣れているようだな。常連か?」
「うん、会社から近いから時々来るんだ」
「そうか。航とも来るのか?」
「いや、あいつは自宅でラーメンばっかり……ってあれ?なんで航?」
突然の『航』の名前に、同じようにおしぼりを取ろうとした手がつい止まる。
「付き合っているんだろう?」
「え!!?なっ、なんでその話……あっ!もしかして聞きたいことってそれ!?」
動揺し思わず大きな声が出る私に、その顔は冷静なまま、眉ひとつ動かさずに「あぁ」と頷いた。
なにかと思えばまさか、航の話だったんだ!!
「あぁ。以前からハルミから聞いてはいたんだが……この前はきちんと仲直り出来たのか?」
「……ハルミ、あの野郎……」
ハルミのおしゃべり……!
どうりで澤村くんがこの前、至って普通にハルミの呼び出しに応じるわけだ!
そう思いながら、一度止まった手を動かし、私もおしぼりで手を拭いた。