イジワルな彼の甘い罠
「あの後仲直りはしたけど……別に、元々付き合ってるわけじゃないよ。体だけ」
「それは“付き合ってる”には入らないのか?」
「うん、入らないでしょ」
きっぱりと言うと、そこへ店員さんが飲み物が入ったグラスを運んでくる。
「お先にお飲物です」
それを受け取り、とりあえずと小さく乾杯をしてひと口飲んだ。
「……それに、それすらももう終わったし」
ふぅ、と息を吐き出すようにつぶやくと、目の前のメガネの向こうの瞳は意味を問うように私を見た。
「終わった?」
「そう。『もうやめる』って航に言ったし、以来連絡も取ってない。あいつと私なんて、そんな程度の関係だったんだよ」
精一杯の作り笑いを見せて、本音を飲み込むようにグラスの中身をまたゴクリと飲んだ。